
トルコの市場(ブルサ市)にて。ヨーグルトの容器には「Yoğurt」と印刷されている。
【トルコ語からヨーグルトに】
日本ではヨーグルトといえばブルガリア、最近ではギリシャも加わってあのあたりのイメージが強いが、ヨーグルトの語源はトルコ語だと言われている(※1)。トルコ語の「yoğurmak」(攪拌する)から「Yoğurt(ヨーウルト)」という名詞に変化。そこから英語の「yogurt(ヨーガート)」、日本ではヨーグルトと呼ばれることになった。
ちなみにブルガリア語では「Кисело мляко(キセロ・ムリャコ)」(酸っぱい乳)というので、ヨーグルトの語源でないことは確かだ。
【健康のために最上が最強】
1907年にロシアの微生物学者イリヤ・メチコニフ(1908年にノーベル生理学・医学賞受賞)が「ブルガリアで100歳以上の老人が多いのはヨーグルトを食べているから」と発表したことで世界中にヨーグルトが広まった。
日本での反応はこれを受けて、1917(大正6)年に広島に本社を置く「チチヤス」がはじめて「ヨーグルト」を発売(※3)。1950年には明治乳業が工場生産を開始。ここまでは砂糖や香料を加えて、ゼラチンなどで固めたものだった。
革新的な転換となったのが1971年の「明治プレーンヨーグルト」(のちの「明治ブルガリアヨーグルト」)。甘くなく、ゼラチンなどで固めない本格的なプレーンヨーグルトだった。
ところでガラス瓶に入れられた日本初のチチヤスヨーグルトの写真をよく見ると「チゝヤスヨーグルド」と印字されている(※4)。だが、そのキャプションは「チゝヤスヨーグルト」と書かれている。ド、と濁る意味は何なのだろう?
まずチチヤスヨーグルトの製品化の歴史過程を追ってブルガリアと細菌学の本場ドイツを調べてみたが、「ド」と濁る発音ではなかった。となると意図的か、まさかの誤記か? 意図的だとすると、2つの可能性を考えた。
まず一つ目。日本語だと「ヨーグルド」のほうが発音しやすいので、ヨーグルトの開発を主導したチチヤスの創業者の5男・真一氏が日本で製品を定着させるためにわざとそうした。
二つ目は、平安時代の乳製品から。チチヤスの創業者が仏教を深く信仰していたことから始まった「チチヤス」。その息子の真一氏がヨーグルト事業をはじめるにあたって「ヨーロッパのブルガリヤ地方では、昔からヨーグルトが不老長寿の食品として珍重されているそうだ。お釈迦さまだって醍醐は最上なりと説いておられる。」と発言したと、1977年週刊文春と掲載されている(※5)その平安時代に日本でも作られたらしい、なぞの乳製品「醍醐(だいご)」をヨーグルトと比定し、その上で濁音を含めることで発音を寄せたのだろうか? ご存じの方がいたら聞いてみたい。
≪参照≫
※1 研究社新英和中辞典「yogurt」の項に「【語源】トルコ語から」と書かれている。
(電子版https://ejje.weblio.jp/content/yogurt
※2トルコはヨーグルト発祥の国&消費量も世界一!料理や飲み物、ソースなど多彩 | 【ターキッシュエア&トラベル】 https://turkish.jp/blog/yogurt/
みんなのヨーグルトアカデミーhttps://yogurt-academy.com/bulgaria-trip-report-02/
※3沿革 | チチヤス株式会社https://www.chichiyasu.com/company/history
※4 向井 智香『ヨーグルトの本』(エムディエヌコーポレーション、2022年)
※5 チチヤス - Wikipediahttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%81%E3%83%81%E3%83%A4%E3%82%B9#cite_ref-W%E6%96%87%E6%98%A519820812_7-7
藤崎武男「乳製品一筋97年 チチヤス乳業の足跡」『週刊文春』1977年9月22日号、文藝春秋、130–135頁。
●次回は、トルコから外れて、閑話休題、私のヨーグルトとの最初の出会いの思い出についてです。







